福岡地方裁判所 昭和52年(ワ)1123号 判決 1981年2月12日
原告 中村定次
被告 国
代理人 田中清 草野幸信 宮本吉則 橋詰和明
主文
一 被告は、原告に対し、金一、〇五〇万円及びこれに対する昭和五二年九月一五日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを八分し、その七を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は、原告に対し、金八、八四〇万円及びこれに対する昭和五二年九月一五日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 仮執行免脱の宣言
第二当事者の主張
一 請求原因
1 (重複登記)
(一) 福岡法務局北九州支局登記官は、昭和四一年三月二三日、別紙図面の(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(1)の各点を順次結んだ線で囲まれる面積六三七・八平方メートルの土地(以下、第一土地という。)及び同図面の(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、(H)、(I)、(A)の各点を順次結んだ線で囲まれる面積八二七・二平方メートルの土地(以下、第二土地という。)について、それぞれ別紙登記目録第一及び第二各記載の分筆登記(以下、本件分筆登記ともいう。)をし、登記簿を作成した。
(二) しかしながら、右第一土地については、地番を小倉市大字赤坂字大山二七九番二一として昭和三四年一二月二一日別紙登記目録第三記載の登記、第二土地については地番を同市大字富野字鳥越大山一七七三番二及び同番六六として同一七年三月一二日同目録第四及び第五記載の登記が既になされていたため、第一土地及び第二土地についての前記登記目録第一及び第二各記載の分筆登記(の結果なされた表示登記)は、右第三及び第四、五各記載の登記と重複するに至つた。
なお、登記目録第五記載の一七七三番六六の土地は、現在では同目録第四記載の同番二の土地に合筆されている。
2 (登記事務の公権力性)
登記事務は、国家が私権のために行う公証行為に関する事務であるから、これを担当する登記官は、国の公権力の行使にあたる公務員である。
3 (登記官の過失)
(一) 登記官は、登記事務を行うについては、不動産登記法上、重複登記を防止するという基本的な注意義務があり(不動産登記法一五条本文参照)、特に、土地の表示に関する登記については、(1)申請書を受け取つた際、遅滞なく申請に関するすべての事項を調査し、必要があるときは、土地の表示に関する事項を調査し(同法五〇条一項)、(2)調査をする場合に必要があるときは、土地を検査し、関係人に文書の呈示を求め、もしくは質問をし(同条二項)、(3)申請書に掲げた土地の表示に関する事項が登記官の調査の結果と符合しないときは、申請を却下しなければならない(同法四九条一〇号)ものとして、不動産登記一般に比して、より強い実質的審査義務が課せられているばかりでなく、不動産登記事務取扱手続準則上も、表示に関する登記の申請があつた場合には、原則として実地調査を行わなければならない(同準則八二条本文)ものとされている。
(二) にもかかわらず、前記福岡法務局北九州支局登記官は、本件各分筆登記申請を受理するに際し、これらの注意義務を怠り、調査を尽くさずに漫然と右申請を受理した過失により、前記1(一)、(二)記載のとおり重複登記を現出させた。
4 (原告の損害)
(一) 原告は、昭和四九年一〇月初めころ、第一土地及び第二土地の所有者と称する訴外内田実(以下、内田という。)から、左記の条件で融資の依頼を受けた。
記
(1) 貸付開始から一年以内に一億円以上で第一土地及び第二土地を売却し、売却代金から貸付金を弁済し、残余金を原告と内田と協議のうえで折半する。
(2) 右期限内に売却ができないときは、右支払に代えて右各土地を無条件で原告に譲渡することとし、そのためにあらかじめ原告に対し所有権移転登記を行う。
(二) 原告は、前記登記目録第一及び第二各記載の分筆登記によつて、第一土地及び第二土地の所有者が内田であると信じ(右分筆登記の結果作成された登記簿上の所有名義人は同人となつていた。)、内田の右融資依頼を承諾し、昭和四九年一〇月二二日から同五一年二月ころまでの間十数回にわたり右内田に合計四、一二〇万円の金員を貸し付けるとともに、同年一一月五日、前記約定(2)に従い、第一土地及び第二土地を実質的な担保とする目的で、同人から、右各土地について代物弁済を原因とする所有権移転登記を受けた。
(三) ところが、前記1(一)、(二)記載のとおり、本件各分筆登記が重複登記であつたため、後になされた右各登記上の所有名義人である原告は右各土地の所有権を取得できず、右各土地の昭和四九年当時の時価である約一億円の損害を蒙つた。
(四) 仮に、右各土地の所有権取得に代わる時価相当額の損害が認められないとしても、原告は、本件分筆登記の記載により、第一土地及び第二土地が内田の所有に属し同人から有効にその所有権を取得できるものと信じて同人に四、一二〇万円の金員を貸し付けたのであるから、右出捐金四、一二〇万円及び前記約定(1)記載の右各土地の売却による利益金相当の損害を蒙つた。
よつて、原告は、被告に対し、国家賠償法一条に基づき、登記官の過失によつてなされた本件分筆登記を信頼したことによつて蒙つた第一土地及び第二土地の所有権取得に代わる時価相当損害金(もしくは融資として出捐した金四、一二〇万円及びこれにより得べかりし土地売却利益金)八、八四〇万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日である昭和五二年九月一五日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1の(一)、(二)は認める。なお、福岡法務局北九州支局は、昭和五三年四月二四日、本件各分筆登記を、不存在の土地についてのものであるとして職権で抹消した。
2 同2は認める。
3 同3のうち、原告主張の趣旨に沿う文言が不動産登記法その他の法条に記載されていることは認めるが、その余は争う。
4 同4のうち、原告が、第一土地及び第二土地について、内田から、昭和四九年一一月五日付で代物弁済を原因とする所有権移転登記を受けていることは認めるが、その余は争う。
三 被告の主張
1 (登記官の過失の不存在)
原告は、登記官に過失があつたと主張するが、原告主張の不動産登記法等に規定する現地調査などの調査義務は、表示に関する登記申請に対する一般的な取扱基準を定めたに過ぎないのであつて、申請のあつたすべての登記について実地調査を行うべきことまでも義務づけたものではなく、当該申請書の添付書類によつて申請にかかる事項が相当と認められる場合は実地調査を省略できるのである。
すなわち、昭和四一年当時の分筆登記申請の処理手続に従つてこれを述べると、土地家屋調査士作成にかかる申請書については、受付後、申請書の記載事項の適否、添付書類の有無及びその内容について調査し、実地調査の要否を決するとともに、申請書と登記簿を比較対照し、なお必要があれば、旧土地台帳付属地図等も参照のうえ、受否を決していたものである。
本件分筆登記申請の場合、当時の登記官は、申請書及び申請書に添付された委任状、地積測量図等を調査した結果、その道の専門家である土地家屋調査士(大倉一男)が右登記手続の嘱託を受けて処理していたことからその申請が相当であると判断し、申請どおりの登記をなしたものであるから、当該登記官が、旧土地台帳附属地図の参照あるいは現地調査をしなかつたとしても、当然には過失があつたとはいえないというべきである。
2 (登記の不備と原告の損害との間の相当因果関係の不存在)
(一) 原告は、第一土地及び第二土地を内田から代物弁済契約により取得したが、右各土地を表示する前記登記目録第一及び第二各記載の分筆登記が重複登記であつたため、右各土地の所有権を取得できなかつたと主張するが、代物弁済契約は要物契約であるから、登記に対応する土地が存在しなければ右契約は有効に成立せず、内田は原告に対しなお給付義務を負つているから、原告には、本件分筆登記に起因する損害の発生があつたとはいえない。
(二) 原告の内田との前記約定に基づく損害発生の主張は、貸付の条件、返済方法が通常の形態でないうえ、第一土地及び第二土地の取得原因についても、当初は代物弁済契約であるといつていたのをその後実質的には譲渡担保であると主張を変更するなど到底措信しがたいが、仮に、原告が右各土地を実質的な担保として融資をしたため損害を蒙つたとしても、原告は不動産業者を自認しているのであるから、自己が担保にとる土地について旧土地台帳附属地図を参照して特定のうえ実際に現地を検分するなどして十分な調査をするのが常識であり、原告がこうした調査を尽くしておれば、本件分筆登記の表示する第一土地及び第二土地が元番である二七九番一の土地の範囲内に存在しないことは容易に判明し、したがつて右各分筆登記の不備に気づいたはずであるから、損害の発生は十分回避しえたというべきである。
また、原告は、昭和四九年一一月ころ、内田から右各土地につき代物弁済を原因とする所有権移転登記を受けるに先立ち、右各土地のうちの一筆である第二土地について現地調査をしているが、原告が右調査をした当時、右第二土地から第一土地の状況はすぐにわかる状態にあり、しかも右第一土地の上には既に真の所有者(既存登記上の所有名義人)の建物が建つていたのであるから、原告は、その際、右第一土地が他人の所有に属することは容易に認識しえたはずであり、しかも、本件分筆登記による登記簿上も、原告に優先する根抵当権あるいは所有権移転の仮登記等が存在しており、場合によつては自己の権利を失う危険があつたのであるから、当然右各土地の権利関係を十分調査するのが常識である。にもかかわらず、原告は、こうした社会通念上当然なすべき調査を怠つたまま融資をしたために損害を蒙つたものであるから、原告が仮に本件分筆登記を信頼して損害を蒙つたとしても、右登記の不備と原告の損害との間には相当因果関係がないというべきである。
3 (過失相殺)
仮に、原告の損害と本件分筆登記との間に相当因果関係があるとしても、原告には次のような過失があるから、これを損害額から相殺すべきである。
すなわち、原告は、前記2の(二)記載のとおり、当初は自己が担保に取る土地の現地調査もせず、旧土地台帳附属地図も参照せずに融資をした過失があるばかりでなく、昭和四九年一一月ころ、第一土地及び第二土地について代物弁済を原因とする所有権移転登記を受けた際、右第二土地の現地調査をし、右各土地が他人所有の土地であることを十分認識しえたにもかかわらずその後も引き続き融資を続けた過失があるから、被告が負担すべき損害の範囲は、原告が内田に貸し付けた金員の合計額一、五〇〇万円のうち、右現地調査以前に貸し付けた六〇〇万円(昭和四九年一〇月二六日貸付分一〇〇万円、同月二九日貸付分三五〇万円、同年一一月二日貸付分一五〇万円合計六〇〇万円)から過失相殺をした額に限定されるべきである。
四 被告の主張に対する認定及び反論
1 (過失相殺について)
原告に被告主張のような過失があつたとの点は争う。
2 (因果関係について)
(一) 被告は、代物弁済契約が要物契約であり、本件分筆登記に対応する土地が存在しなければ契約自体が有効に成立しないと主張するが、代物弁済契約における要物性とは物の引渡しによつて契約が効力を生ずるということであり、不動産の場合、移転登記をもつて引渡しがあつたとするのが判例、通説であり、本件の場合、移転登記を経由していたのであるからこの点に関する被告の主張は理由がない。
(二) 被告は、原告が現地調査をすれば、本件被害の発生は回避できた旨主張するが、現地調査をしても、登記簿の記載が誤つているとか登記簿に記載された土地が存在しないことまで確認することは不可能であり、したがつて、仮に、原告が契約前に現地調査を実施していたとしても、それによつて登記簿の記載に何らかの疑念を抱くに至つたとは考えられず、被告の主張は理由がない。
(三) 被告は、また、原告が第一土地及び第二土地に抵当権等が設定されていることを知つていたから、場合によつては自己の権利を失う危険を承知していたと主張するが、原告は、右各土地の所在状況等から任意売却による有利な換価方法によつて処分すれば、右抵当権等の整理をしたうえ、残余金を生み出す見込みが十分あると信じて融資をしたものであるから、抵当権等の存在を知つていたからといつて自己の権利を失う危険を承知していたということにはならない。
第三証拠 <略>
理由
一 請求原因1及び2については当事者間に争いがない。
二 請求原因2(登記官の過失)について
登記官の登記事務処理上の注意義務として、不動産登記法その他の法条に原告主張のような調査義務の記載のあることは当事者間に争いがない。
被告は、登記官の義務について定めた右各規定は、登記事務処理についての一般的な取扱基準を定めたものに過ぎず、すべての登記申請についてこれらの調査をしなければならないわけではなく、申請書の添付書類によつて申請事項が相当と認められる場合には実地調査を省略できる旨主張するが、重複登記を防止すべき義務は登記制度の趣旨から登記官の最も基本的な注意義務であることは明らかであり、そのため、特に表示に関する登記申請については、原告主張のとおり登記官に実質的調査権が認められているのであるから、登記官は、右申請を処理するにあたつては、単に申請書の添付書類を調査するだけでは足りず、申請のあつた土地について、旧土地台帳附属地図を参照し、場合によつては、現地調査をするなどの調査をして、重複登記を防止する注意義務があるというべきである。
ところが、<証拠略>によると、本件の場合、二七九番一の土地から第一土地及び第二土地の各分筆登記申請を受けた登記官が現地調査はもちろん、旧土地台帳附属地図を参照するなどの調査を何らしなかつたことが認められ、右事実によれば、請求原因1(一)、(二)記載の重複登記を現出せしめた点について、当該登記官には職務上必要とされる調査義務を怠つた過失があるといわなければならない。
三 請求原因4(原告の損害)について
1 原告が、昭和四九年一一月五日、第一土地及び第二土地につき代物弁済を原因とする所有権移転登記を受けたことは当事者間に争いがなく、<証拠略>によれば、原告が内田から請求原因4の(一)の(1)、(2)記載の条件で融資の依頼を受けたこと、当時、本件分筆登記の結果作成された第一土地及び第二土地の登記簿上の所有名義人は、右内田となつていたため、原告は、右登記簿の記載等から同人が右各土地の所有者であると信じ、右各土地を実質的な担保として融資をしたこと、しかし、右第一土地及び第二土地は本件分筆登記の元番である二七九番一の範囲外にあり、他の地番として既に登記されていた(別紙登記目録第三ないし第五記載の登記)ため、内田ないしその前所有名義人(本件分筆登記上の)は右各土地の所有権を取得する由がなかつたもので、本件分筆登記そのものも昭和五三年四月二四日登記官の職権で抹消され、原告は右各土地につき何らの権利も取得しえなかつたことがそれぞれ認められ、右認定に反する証拠はない。
2 ところで、原告は、前記登記目録第一及び第二各記載の分筆登記を信頼したために蒙つた損害の内容として、右分筆登記によつて表示されていた第一土地及び第二土地の所有権を取得しえなかつたことによる右各土地の時価相当額の損害あるいは請求原因4(一)(1)記載の約定に従つて得べかりし右各土地の売却利益金の逸失損害を主張するが、そもそも、原告が第一土地及び第二土地を取得もしくは売却処分しえないのは、前示の事実に照らすと、内田ないしその前所有名義人が右各土地の所有権をもともと有していなかつたことによるものであつて、本件分筆登記の存在とはかかわりのないことが明らかであるから、原告主張の右各損害は本件分筆登記がなされたことに起因して生じた損害ということは到底できず、結局、右登記を信頼したために蒙つた原告の損害は、右登記で表示されていた第一土地及び第二土地を実質的な担保としたために蒙つた損害すなわち現実に内田に融資をし、その回収が不能となつたことによる損害に限られるというべきである。
3 そこで、原告が実際に内田に融資をした額が問題となるが、<証拠略>によれば、原告が、内田に対し、昭和四九年一〇月二六日に一〇〇万円、同月二九日に三五〇万円、同年一一月二日に一五〇万円、同月八日に一〇〇万円、同月九日に三〇〇万円、同五〇年一月一四日に二〇〇万円、同年五月二〇日に一〇〇万円、内田の代理人である妻ヒサ子に対し、同年四月一七日に一〇〇万円、同年八月四日に一〇〇万円の合計一、五〇〇万円を融資したこと、その後内田の倒産により右融資金が事実上回収不能となつたことがそれぞれ認められる。
右融資額について、原告は、内田及び内田の妻ヒサ子に直接交付した右一、五〇〇万円以外に内田の負債整理にあたつていた訴外森田弘(以下、森田という。)を通じて融資した金員があり、これらの合計額は、右一、五〇〇万円を含めて四、一二〇万円となる旨主張するが、右事実を証するものとして提出された<証拠略>の領収証の作成名義はいずれも内田ではなく森田弘となつているばかりでなく、<証拠略>によれば、内田は、右各領収証に記載された金員が現実に森田に交付されたか否かはもちろん、右金員が原告から出捐されたものであるかどうかについてもほとんど知らないことが認められるから、仮にこれらの領収証記載の金員が森田に交付されているとしてもこれをそのまま原告から内田に対する融資と認めるには証拠が不十分であり、他に原告の内田に対する本件第一、第二土地担保の融資額が前記認定の一、五〇〇万円を超えることを認めるに足りる証拠はない。
四 なお、被告は、前記分筆登記の不備と原告の損害との間には相当因果関係がないと主張するが、右分筆登記がなされていなければ、原告が右登記によつて表示されていた第一土地及び第二土地を実質的な担保として内田に融資することはなかつたはずであるから、原告が右分筆登記を信頼して融資をしたことが認められる以上、右登記の不備と原告の融資による損害との間には相当因果関係があるというべきである。
五 被告の主張3(過失相殺)について
被告は、原告に被告の主張3記載の過失があるから原告の損害額からこれを相殺すべき旨主張するのでこの点について検討するに、<証拠略>によれば、原告は、内田に融資をするに際し、当初は担保である前記第一土地及び第二土地について旧土地台帳附属地図を参照して特定するなどの行為はもちろん、現地を実際に検分するなどの調査も一切せず、単に当時小倉に住んでいた義弟の堀口美見に付近の土地の時価を照会しただけで融資をしていること、昭和四九年一一月ころ、右各土地について代物弁済を原因とする所有権移転登記を受けるに際し、第二土地の実地調査をしたが、その際、右第二土地のすぐ近くにある第一土地上には既に他人(既存登記による所有権者)所有の建物が建つており、右第一土地及び第二土地が他人所有であることを認識しえたにもかかわらず、土地の権利関係について何らの調査もせず引き続き融資を続けたことがそれぞれ認められ、<証拠略>中右認定に反する部分は信用できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
したがつて、これらの事実を斟酌すると、前記損害の発生について、原告には過失があるといわざるをえず、その過失割合は損害額の三割と認めるのが相当であるから、結局、被告が賠償すべき損害額は、前記損害額一、五〇〇万円から右過失相殺をした一、〇五〇万円となる。
六 結論
以上によれば、原告の被告に対する本訴請求は、金一、〇五〇万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日であること記録上明らかな昭和五二年九月一五日から完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条を適用し、仮執行宣言の申立てはその必要がないから却下することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 柴田和夫 寺尾洋 亀田廣美)
別紙 登記目録、図面 <略>